一生、自分の歯で食べよう
2023年05月12日
先述した通り、世界的に寿命が延びて「人生100年時代」と言われるようになりました。
日本での歯科関連の取り組みに8020(ハチマルニイマル)運動という運動があります。
これは、「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。なぜ80歳、なぜ20本なのでしょう。
この運動は、平成元年に当時の厚生労働省にあたる厚生省と日本歯科医師会が提唱して開始されました。この80歳という数字は開始当時の日本人の平均寿命からきています。
「一生自分の歯で食べよう」という当時使われていた標語の「一生」を年齢で表し、より分かり易くしたものとなります。
一方で20本以上という数字ですがこれは「自分の歯で食べられる」ために必要な歯の数を提示しています。約20本以上の歯が残っていれば、弾力のあるものや硬い食品でもほぼ満足に噛めることが科学的にも明らかになっています。
ただし、この数字はあくまで社会的な目標値であり個人で見た場合は違う場合もあります。それにすでに歯を喪失していたとしても適切に補綴装置(義歯、インプラント)を入れることでしっかりと噛める状態を作ることができます。
「そんなに硬いものも食べないし歯がなくても今のままで十分食べられる。」
「入れ歯を入れて食べると味がしない、美味しくない」
確かにそうです。おっしゃる通りです。よく言われます。
ただ一生自分の歯で噛むことは食事を楽しむという点で理想なことは変わりありませんが噛むことはその他にも私たちの体においてとても大切な役割を担っています。
例えばしっかり噛めることで重いものを持つ時、こけそうになった時など全身に力を入れて踏ん張ることができます。
噛むことで分泌される唾液は食物を丸めて飲み込みやすくしたり口の中の自浄作用も担っています。
噛むことで筋肉が動き脳に血液が十分に循環し認知症を発症するリスクが軽減するといわれています。
他にもありますがしっかり噛めることというのは人生において「食事を楽しむ」だけではなく寿命が延びることで出てくる病気や事故、身体機能低下の不安を軽減し、「8020」を達成した後の20年もより自由度の高い豊かな人生を過ごすために一役買っている大事な機能と言えます。
私はこの記事を書くことで歯のない、噛めない自分を想像しました。
・笑えない
・話したくない
・外で人と一緒にお食事したくない
一気に行動範囲が狭まりました。
こけるリスクを考えると遠出を控えたり、友人の誘いを断ったり。
世間話すら遠ざけるかもしれません。
でもやはり周りの人と同じものを食べて「美味しいね」と笑いながら食事をしたい。
そしてできるだけ来て下さる患者様にはいつまでも楽しいことを諦めてほしくありませんし、大事な方と笑いながら食事をしていただきたいと改めて思いました。
是非お困りごとがあれば今更と思わずご相談頂けたらと思います。

季節の花